ニュースリリース
2025年09月04日 掲載
2025年9月3日(水)、宮崎大学、宮崎市など研究チームは、その共同研究の中で、あぶらとりフィルムで採取した皮脂に含まれるRNA*を利用してヒトの肌や体の状態を把握する非侵襲の解析方法が、ネコにおける感染症ウイルスの検出に応用可能であることを確認し、報道関係者向けの説明会をみやざき動物愛護センターで行いました。
ネコには病気を引き起こす多くのウイルス感染症があり、宮崎県をはじめとして各地で感染者が出ている重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)*や、猫後天性免疫不全症候群(Feline Immunodeficiency Virus:FIV感染症、いわゆる猫エイズ)などは、近年大きな社会問題となっています。ネコの診療現場では、検査者として獣医師や愛玩動物看護師が直接対応することが多く、血液検査では注射針を使用します。こういった検査はネコの負担が大きいだけでなく、検査者にも感染リスクやけがの危険が伴うため、安全性の向上は極めて重要です。
説明会では、研究を担当した農学部獣医学科3年の福嶋優莉さんが司会を務め、「ヒトやネコに心身の健康に貢献したいという思いを大切に研究に取り組んできた。人獣共通感染症の蔓延を防ぐにあたって、今回の検査法が活用され、人と動物の健康を守るための一助になっていけば嬉しい」との思いを語りました。
続いて、農学部獣医学領域 齊藤暁准教授より今回の研究について、ヒト由来のDNA混入を防ぐためにヒトやネコのDNA/RNAと識別可能なハウスキーピング遺伝子プライマーの開発を行ったことなど研究についての説明がありました。
また、会見会場では、宮崎市との共同研究ということで、市制100周年を記念して新たに誕生した新たなキャラクター"みやねこ"にも出演いただき、実際に猫から検体を採取する前に、デモンストレーションを行っていただきました。
最後に、宮崎市どうぶつ愛護センター福田健一郎センター長より「この成果が、一匹でも多くの猫の命を救い、人と動物が共に健康で安心して暮らせる社会の実現につながることを心から願っております」との言葉をいただきました。
今回の技術については、特許を出願中で、今後一般的な実用化を目指して、引き続き研究を進めていきます。宮崎大学は、今後も自治体や企業などと連携し、学術的な研究成果を社会に還元できるよう、取り組んでまいります。
△研究関係者
【研究の詳細についてこちらから】あぶらとりフィルムで簡単検査 ~皮脂RNAでネコのウイルス感染を見つける新技術~https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20250903_01_press.pdf
【用語説明】*RNA:RNA(リボ核酸)は、リボースを含むヌクレオチドからなる高分子で、遺伝情報の伝達や発現に重要な役割を担います。RNAウイルスでは、RNAがDNAの代わりにゲノムとして機能します。新型コロナウイルス感染症の検査同様、今回の研究ではSFTSウイルスや猫エイズウイルスのRNAを検出することでウイルス感染の判別を行いました。
*SFTS:マダニが媒介するSFTSウイルスによる人獣共通感染症で、発熱、消化器症状、白血球・血小板減少などを特徴とします。重症化すると多臓器不全や神経症状を引き起こすことがあり、ヒト、ネコいずれにおいても高い致死率を示します。近年は国内での報告例も増加しており、先日、三重県の獣医師がSFTSに感染して死亡したことが報告され、注意喚起が強まっています。
【関連リンク】農学部獣医微生物学研究室https://www.cc.miyazaki-u.ac.jp/saito_lab/
PDFファイルをご覧いただくためには、Adobe Reader(無償)が必要です。Adobe Readerは Adobe Readerのダウンロードページよりダウンロードできます。
PAGE TOP