ニュースリリース
2026年03月02日 掲載
宮崎大学医学部機能制御学講座 生命分子科学分野の徐岩教授の研究グループは、抗がん化合物 クラクシン(CBL0137) が、通常とは異なる形をした Z型DNA に選択的に結合することを発見しました。さらに、分子の形を調べる NMR(核磁気共鳴)法を用いて、抗がん化合物が結合したZ型DNAの立体構造を、世界で初めて明らかにしました。本研究成果は2026年2月10日に英国科学雑誌「Nucleic Acids Research」(インパクトファクター:13.1)に掲載されました。
【研究成果のポイント】・ 抗がん化合物「クラクシン(CBL0137)」が、左巻き構造を持つ「Z型DNA」に選択的に結合することを発見・NMR(核磁気共鳴)法により、Z型DNAと抗がん化合物が結合した状態の立体構造を、世界で初めて解析し、明らかにした・ その結果、Z型DNAは通常のDNAよりも細く、表面のくぼみが非常に狭いという特徴を持ち、クラクシンがこのZ型DNAの「特別な形」にぴったりとはまり込むように結合していることを解明・ クラクシンの結合によってZ型DNAが安定し、がん細胞内の遺伝子の働きに影響を与える可能性が示唆された
【研究の背景】私たちの体の中にあるDNAは、ふつう「右巻きのらせん構造」をとっています。しかし、特定の条件下では、左巻きのらせん構造を持つ「Z型DNA」という珍しい形になることが知られています。Z型DNAは50年以上前に発見されましたが、「なぜ存在するのか」「どんな働きをしているのか」は長い間よく分かっていませんでした。近年になって、Z型DNAが遺伝子の働きの調節やがん・炎症との関係に関わっている可能性が示され、注目を集めています。一方、「クラクシン」と呼ばれる新しいタイプの抗がん化合物は、DNAの構造に直接作用してがん細胞の働きを弱めることが知られていましたが、DNAのどの形に、どのように結合するのかは分かっていませんでした。
【研究の成果】抗がん化合物が「左巻きDNA」に結合する様子を初めて可視化宮崎大学医学部の徐岩教授の研究グループは、抗がん化合物 クラクシン(CBL0137) が、通常とは異なる形をした Z型DNA に選択的に結合することを発見しました。さらに、磁石と電波を使って分子の形を調べる NMR(核磁気共鳴) という方法を用いて、Z型DNAと抗がん化合物が結合した状態の立体構造を、世界で初めて明らかにしました。その結果、Z型DNAは通常のDNAよりも細く、表面のくぼみが非常に狭いという特徴を持っており、クラクシンはこの「特別な形」にぴったりとはまり込むように結合していることが分かりました(図1)。この結合によってZ型DNAが安定し、がん細胞の中での遺伝子の働きに影響を与える可能性が示されました。
図1 抗がん化合物クラクシンがZ型DNAに結合した立体構造左巻き構造を持つZ型DNA(青)に、抗がん化合物クラクシン(オレンジ)が結合している様子を示す。
【社会的な意義】DNAは「設計図」として知られていますが、その"形"そのものが病気に関係することは、まだ広く知られていません。本研究は、DNAの形の違いに注目することで、がんの新しい治療法につながる可能性を示しています。Z型DNAだけを狙う薬が開発できれば、正常な細胞への影響を抑えた、より副作用の少ない抗がん治療につながることが期待されます。本研究成果は、将来の医療や創薬研究に新しい方向性を与えるものです。
【論文情報】• 掲載誌 : Nucleic Acids Research• 論文タイトル : Solution structure of Z-form DNA bound to a curaxin ligand CBL0137• 著者 : Feifan Liu, Shiyu Wang, Yan Xu• DOI : https://academic.oup.com/nar/article/54/4/gkag104/8471000
2026年2月19日プレスリリース:https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20260219_02_press.pdf
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