ニュースリリース
2024年08月22日 掲載
発表のポイント
宮崎大学工学部電気電子工学プログラム(GX研究センター兼任)の永岡章准教授を中心とした研究グループは、身の回りの熱を効率よく電気に変換するn型(Cu1-xAgx)2ZnSnS4 (CAZTS)単結晶の開発に成功しました。これまで高い熱電性能指数ZTを有する材料は、p型伝導がほとんどであり、ペアとなる高性能n型材料の開発が急務です。今回特許も取得している独自の結晶成長技術を用いて、有毒な元素や高価なレアメタルを含まないn型多元系硫化物材料(環境調和した材料)における最高値のZT=1.1を500 ºC付近で達成しました。
本研究成果は、8月12日付で米国物理学協会の速報誌「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載されました。この材料を利用する事によって、例えば車のエンジンで利用されずに大気中に放出される高温の熱を電気に直接高効率で変換する技術への展開も期待されます。環境調和した独自の熱電変換材料からカーボンニュートラルやSDGs実現へ貢献していきます。
図1 基本的な熱電発電デバイスの構造
図2 CAZTS単結晶インゴットと熱電変換効率測定の様子
宮崎大学独自の技術から環境調和した材料を基盤として、高い熱電性能指数を示すp型とn型両伝導を実現しました。このアドバンテージを活かしながら、長期安定性・高効率な環境調和した熱電デバイスの開発を進めています。更なる研究開発により、従来の特性を凌駕する高性能熱電デバイスを創出することができれば、熱電変換が汎用的なエネルギー源として普及していくことが期待されます。
論文名 : n-type kesterite thermoelectric (Cu1-xAgx)2ZnSnS4 single crystals exceeding dimensionless figure of merit value of 1.0掲載誌 : Applied Physics Letters (APL)著者 : Akira Nagaoka, Shoma Miura, Koki Nakashima, Yuichi Hirai, Tomohiro Higashi, Kenji Yoshino, and Kensuke NishiokaDOI : 10.1063/5.0220909URL : https://doi.org/10.1063/5.0220909
1)p型伝導・・・材料中の電荷を運ぶキャリアがプラスの電荷を持つホールである場合、p型伝導を示す。 2)n型伝導・・・材料中の電荷を運ぶキャリアがマイナスの電荷を持つ電子である場合、n型伝導を示す。3)単結晶・・・構成元素が規則正しく、周期的に並んでいる材料。単結晶が多数集まってランダムに結合している材料を多結晶と言う。
・プレスリリース 2024年8月22日https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20240822_01_press.pdf
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