ニュースリリース
2025年08月28日 掲載
農学部・応用生命化学コース・植物生理学研究室(稲葉丈人教授)の学生による研究成果が、Oxford University Pressが発行する国際的な植物科学雑誌「Plant and Cell Physiology」の7月号に掲載され、同号の表紙を飾りました。
葉緑体における光合成CO2固定反応は、地球上の生命を支える最も重要な化学反応のひとつです。人類による化石燃料の使用により大気CO2濃度が上昇していますが、現在のCO2濃度は多くの植物が分類される「C3植物」にとっては十分ではなく、植物の多くはCO2不足の状態で光合成を行っています。施設栽培で用いられる「CO2施肥」は、植物にとって実際に大気CO2濃度が十分ではないことを示す好例です。
今回の研究では、CO2不足の際に植物細胞内で起こる変化を調査しました。まず、シロイヌナズナが低CO2条件下でサリチル酸(SA)を高蓄積することを見出しました。さらに、突然変異体を用いた解析により、蓄積したサリチル酸はイソコリスミ酸合成酵素を介して合成されていることも明らかにしました(図1)。このサリチル酸の蓄積は低CO2条件下での光合成関連遺伝子の発現抑制を引き起こすこと、さらに細胞死関連遺伝子の発現を調節することも明らかにしました。以上の結果により、植物ホルモン・サリチル酸が植物の低CO2応答において重要な役割を果たすことを示しました(図2)。
この研究成果は、植物生理学研究室の米田幸誠さん(令和6年3月・修士課程修了)が修士論文として執筆、提出したものです。表紙イラストはCO2の減少がサリチル酸の蓄積を引き起こし、その結果、遺伝子発現の変動が生じるという概念を視覚化したものです。
【論文情報】論文:Role of salicylic acid in low CO2 response in Arabidopsis.著者:Kosei Yoneda, Susumu Uehara, Takakazu Matsuura, Izumi C. Mori, Yasuko Ito-Inaba and Takehito Inaba
掲載誌:Plant and Cell Physiology, Vol. 66, Issue 7, Pages 1005-1019論文へのリンク:https://doi.org/10.1093/pcp/pcaf052
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