ニュースリリース
2021年11月12日 掲載
新しく別種と同定された造礁サンゴに、宮崎県由来の名前「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」と命名
<ポイント>●宮崎県にも生息している造礁サンゴの「パリカメノコキクメイシ」に別種が含まれていることが新たに判明。●その種に、主な研究場所となった日向灘に由来して「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」と命名。●結果として、日本では、「パリカメノコキクメイシ」は奄美大島以南にしか生息していないことが分かり、一方、「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」は本州~沖縄の広範囲に生息していることが明らかとなりました。
【概要】宮崎大学農学部海洋生物環境学科の深見裕伸教授の研究グループ(滿木雄大・修士課程2020年度修了・宮崎市出身)は、沖縄高専の磯村尚子准教授、千葉県立中央博物館の立川浩之主任上席研究員らと共同で、インド太平洋に広く分布している造礁サンゴの「パリカメノコキクメイシ」 (Coelastrea aspera) に形態、生殖様式、分子系統的に区別できる別種が含まれていることを発見し、その種に、本研究の主体地域である日向灘に由来して「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」 (Coelastrea incrustans) と命名しました。
造礁サンゴはサンゴ礁生態系の基盤となる非常に重要な生物です。現在、水温上昇などの環境変動によりその数が激減していることから、全世界的に保全対象となっています。その一方で、種の境界を定めるのが難しく、地域ごとの種多様性を知るのも困難であるため、現在分類学的な研究が世界的に進められています。
造礁サンゴの1種である「パリカメノコキクメイシ」には生殖様式が違う2グループが存在することがこれまで知られていました。今回の研究によりこれら2グループが別種であることが明らかになり、「パリカメノコキクメイシ」とは異なる新たな種が同定されました。その種には、1886年にダンカン博士が命名した学名を復活させCoelastrea incrustans とし、和名に「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」と命名しました。また、結果として、「パリカメノコキクメイシ」は本州から九州には生息しておらず奄美大島以南のみに分布していることが判明した一方で、「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」は、本州~九州、および沖縄以南に広く分布していることも判明しました。
今回の研究成果は、これまで一種と考えられていた造礁サンゴの種の中に別種が含まれていたことを明らかにしたものであり、造礁サンゴの種多様性や地域特異性を考える上で基盤となる研究となると考えています。研究チームには、宮崎大学、沖縄工業高等専門学校、中央研究院(台湾)、千葉県立中央博物館、シンガポール国立大学(シンガポール)の研究者が参加しました。
本研究成果は、2021年11月5日に国際学術雑誌「Invertebrate Systematics」のオンライン版で公開されました。(https://www.publish.csiro.au/IS/IS21025)
写真 「パリカメノコキクメイシ」と「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」
【論文情報】Yuta Mitsuki, Naoko Isomura, Yoko Nozawa, Hiroyuki Tachikawa, Danwei Huang, Hironobu Fukami. Distinct species hidden in the widely distributed coral Coelastrea aspera (Cnidaria, Anthozoa, Scleractinia). Invertebrate Systematics, in press
▽詳細はこちらから▽・プレスリリース(2021.11.12)https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20211112_01_press.pdf
・研究者データベース 深見裕伸 https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100000674_ja.html
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