SARS-CoV-2オミクロンBA.2.75株のウイルス学的性状の解明

2022年10月12日 掲載

 

新型コロナウイルスの「懸念される変異株（VOC：variant of concern）」のひとつである「オミクロンBA.2.75株（通称ケンタウロス）」のウイルス学的特徴を、流行動態、免疫抵抗性、および実験動物への病原性等の観点から明らかにした研究成果が発表されました。

研究成果は、科学雑誌「Cell Host & Microbe」10月9日オンライン版にて掲載され、掲載論文の共著者として、農学部獣医学科齊藤 暁准教授と大学院医学獣医学総合研究科博士課程2年Maya Shofaさんが名を連ねています。

主なポイントは以下のとおりとなります。

• 2021年末に南アフリカで出現した新型コロナウイルス「オミクロン株（1.1.529, BA系統）」は、当初オミクロンBA.1株が全世界に伝播したが、その後オミクロンBA.2株へと置き換わった。これまでに複数出現したオミクロンBA.2株の亜系統（BA.2.12.1, BA.5など）のうち、本邦で現在進行中の第7波は、オミクロンBA.5株が主流であるが、インドをはじめ世界各国でオミクロンBA.2株ベースで別系統であるオミクロンBA.2.75株（通称ケンタウロス）同定の報告が増加している。
• オミクロン2.75株は、オミクロンBA.2株と比較してヒト集団内における実効再生産数が1.34倍高いことを明らかにした。
• オミクロン2.75株は、オミクロンBA.2株と比べて、4回のワクチン接種によって誘導される中和抗体により抵抗性を示すこと、オミクロンBA.2株やオミクロンBA.5株とは抗原性が異なることを明らかにした。
• オミクロン2.75株のスパイクタンパク質が感染受容体であるACE2と既存変異株より強く結合することを実験的、構造学的に示した。
• オミクロン2.75株スパイクタンパク質による合胞体形成活性（注６）はオミクロンBA.2株スパイクタンパク質に比べて有意に高かった。
• ハムスターを用いた感染実験の結果、オミクロン2.75株は、オミクロンBA.2株よりも高い病原性を示すことを突き止めた。

　▼プレスリリース：SARS-CoV-2 オミクロン2.75 株（通称ケンタウロス）のウイルス学的性状の解明

　　http://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20221012_02_press.pdf

　▼宮崎大学農学部獣医微生物学研究室
　　https://miyazakivetmicro-lab.jimdosite.com/
　
　▼東進ハイスクール×宮崎大学「AI×農業・医学×獣医学！?分野を超えた学びに迫る！」
　　https://www.youtube.com/watch?v=qWN2VR5_9TM