宮崎大学
ニュースリリース

Small for Gestational Age児(在胎週数の平均に比べて体格が小さい子ども)の 身長発育に外遊びが大事!

2026年11月06日 掲載

Small for Gestational Age児(在胎週数の平均に比べて体格が小さい子ども)の 身長発育に外遊びが大事!
<Small for Gestational Age児における外遊びと3歳時キャッチアップ成長との関連 ―エコチル調査より―>について

エコチル調査南九州・沖縄ユニットセンター(宮崎大学サブユニットセンター)、宮崎大学医学部小児科 青木良則講師、宮崎大学医学部社会医学講座データマネジメント分野 中井陸運教授、エコチル調査宮崎大学サブユニットセンター 澤田浩武センター長(医学部看護学科 生活・基盤看護科学講座教授)、宮崎大学医学部小児科 盛武浩教授の研究チームは、エコチル調査の約1,800人のデータを用いて、平均的な体格に比べて小さく生まれた子ども(SGA児)の外遊びと成長の関係について解析しました。その結果、1-3歳で外遊びをする子どもは、ほとんどしない子どもに比べて、3歳までに身長が追いつく「キャッチアップ成長」に達する割合が高い傾向が認められました。この結果は、外遊びはSGA児の健やかな成長に関連する生活習慣の一つである可能性を示しています。

なお、この研究は観察研究であり、外遊びが直接の原因であるかは明らかではありません。また、外遊びの状況は保護者の報告に基づくため誤差が含まれる可能性があります。そのため、より詳しい因果関係を明らかにするための研究が今後必要です。

本研究の成果は、令和8年10月29日(日本時間10月30日0時)付でSpringer Natureから刊行される公衆衛生学分野の学術誌「BMC Public Health」に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

2.    研究の背景
子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしています。
エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。
 Small for gestational age児(SGA児:在胎週数に比べて小さく生まれた子ども)は、出生後の成長や健康に影響を受ける可能性があります。特に、幼児期に十分な成長が得られないことは、将来の健康状態にも関係することが知られています。そのため、SGA児の出生後の成長に関連する要因を明らかにすることは重要です。これまでの研究では、妊娠中や出生時の要因について多く検討されてきましたが、出生後の生活習慣に関する研究は限られていました。
外遊びは、子どもにとって身近な生活行動の一つです。外遊びを行うことで、身体活動の機会が増えるほか、ビタミンDの産生に関わる日光を浴びる機会にもなります。そのため、外遊びは子どもの成長と関連する可能性が考えられています。しかし、SGA児において、外遊びと成長との関連を検討した研究はほとんどありませんでした。本研究では、エコチル調査の全国規模のデータを用いて、SGA児における幼児期の外遊びと3歳時点の成長との関連を検討しました。

3.    研究内容と成果
本研究では、エコチル調査に参加した約10万人の親子のうち、SGA児2,509名を対象として、幼児期の外遊びと3歳時点の成長との関連を調べました。外遊びについては、1~2歳時および2~3歳時の夏季・冬季の外遊びの状況を調査し、「両季とも外遊びをする」「いずれか一方の季節のみ外遊びをする」「両季ともほとんど外遊びをしない」の3群に分類しました。また、3歳時の身長が年齢別基準値の−2標準偏差(SD)以上となることを「キャッチアップ成長」と定義し、外遊びとの関連を解析しました。
SGA児2,509名のうち、欠損データがあった児を除き、最終的に1,796名が解析対象となりました。そのうち、296名(16.5%)は3歳時点でキャッチアップ成長に達していませんでした。解析の結果、1~2歳時に夏季・冬季ともほとんど外遊びをしない児では、両季とも外遊びをする児と比較して、3歳時点でキャッチアップ成長に達していない児の割合が高く、統計学的な関連が認められました(調整オッズ比2.51、95%信頼区間1.22-5.18)。同様に、2~3歳時の外遊びについても、両季ともほとんど外遊びをしない児では、3歳時点でキャッチアップ成長に達していない児の割合が高いという関連が認められました(調整オッズ比4.36、95%信頼区間1.42-13.38)。一方で、夏季または冬季の一方のみ外遊びをする児では、明らかな関連は認められませんでした。
本研究は、全国規模の出生コホート調査データを用いて、SGA児において、出生前や出生時の要因だけでなく、出生後の生活習慣が成長と関連する可能性を示した研究です。幼児期の外遊びは、身体活動や日光を浴びる機会を通じて、SGA児の成長に関わる生活要因の一つである可能性があります。本研究の結果は、SGA児の成長を見守る際に、出生後の生活習慣にも着目することの重要性を示唆しています。

4.    今後の展開
本研究では、SGA児において、幼児期の外遊びと3歳時点での成長との関連が示されました。本研究の結果は、SGA児の成長を見守る際の一つの視点として、出生後の生活環境を考える上で参考となる可能性があります。外遊びは、特別な設備を必要とせず、日常生活の中で取り入れやすい生活習慣である点も特徴です。
一方で、本研究は観察研究であり、外遊びを行うことが直接的に成長を促すことを示したものではありません。今後は、身体活動、日光曝露、睡眠や栄養など、外遊びに関連するさまざまな要因が成長に及ぼす影響や、その仕組みを明らかにする研究が必要です。また、外遊びを促す介入がSGA児の健やかな成長につながるかについても、さらなる検討が求められます。
本研究は日本の子どもを対象とした研究であるため、異なる生活環境や文化的背景を持つ集団への適用については注意が必要です。今後もエコチル調査の長期追跡データを活用し、子どもの発育や健康に関わる環境要因の解明を進めていきます。

5.    参考図

20261030_ecochild01.jpg

図 本研究の概要図

6.    補足
【外遊びの有用性と安全面への配慮について】
近年、子どもの外遊びの機会は減少していることが指摘されています。一方で、外遊びは身体活動を促し、日光を浴びる機会を提供するなど、幼児期の発達において重要な役割を果たす生活行動の一つです。
ただし、外遊びを行う際には、安全面への配慮が重要です。特に、気温の高い季節には熱中症対策を行い、時間帯や服装、水分摂取などに注意する必要があります。また、紫外線への過度な曝露を避けるため、日陰の利用や帽子・衣服・日焼け止めによる対策など、年齢や環境に応じた適切な対応が求められます。
本研究は、SGA児において外遊びと成長との関連を示したものであり、外遊びを一律に推奨することを目的としたものではありません。子どもの安全を確保しながら、発達段階や環境に応じた適切な外遊びの機会を持つことが重要です。

7.    用語解説
【SGA(Small for gestational age:在胎不当過小)】
お母さんのお腹の中にいた期間(在胎週数)に比べて、出生時の体格(体重や身長)が小さい児を指します。本研究では、国際的な基準であるInternational Consensus Guidelineに基づき、出生体重または出生身長が同じ在胎週数の児の平均から−2標準偏差(SD)未満である児をSGA児と定義しました。

【キャッチアップ成長(catch-up growth)】
出生時に小さかった子どもが、出生後の成長過程で身長や体重が増加し、同年齢の子どもの標準的な範囲に近づくことを指します。本研究では、3歳時の身長が年齢別基準値の−2標準偏差(SD)以上になることをキャッチアップ成長と定義しました。

【オッズ比(調整オッズ比)】
ある出来事(本研究では「3歳時にキャッチアップ成長に達しないこと」)の起こりやすさを、2つのグループで比較する指標です。本研究では、母親の年齢や身長、出生時の条件、家庭環境など、成長に影響する可能性がある他の要因を考慮した「調整オッズ比」を用いて、外遊びとキャッチアップ成長との関連を評価しました。なお、オッズ比は関連の強さを示すものであり、原因と結果の関係を直接示すものではありません。

8.    発表論文
題名(英語):Outdoor Play and Catch-up Growth in Small-for-Gestational-Age Children: A Nationwide Prospective Birth Cohort Study from the Japan Environment and Children's Study
著者名(英語):Yoshinori Aoki1, Michikazu Nakai2, Hirotake Sawada1, Hiroshi Moritake1, and the Japan Environment and Children's Study Group3

1青木良則、澤田浩武、盛武浩:宮崎大学医学部小児科
2中井陸運:宮崎大学医学部社会医学講座データマネジメント分野
3グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成

掲載誌:BMC Public Health
DOI: 10.1186/s12889-026-28796-x

プレスリリースはこちら
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20261030_01_press.pdf

エコチル調査宮崎
https://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/ecochild/

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