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野球がつないだ宮崎との不思議な縁 ~ 趣味を研究につなげるスリランカ人留学生 ~
Niroshan Punchihewa(ニローシャン)さん

2022年2月14日掲載

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Niroshan Punchihewa(ニローシャン)さん

宮崎大学大学院 農学工学総合研究科 博士後期課程 3年

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 スリランカ出身の大学院生Niroshan Punchihewaさん(通称:ニロさん)は、スリランカ東部のアンパーラという地方都市生まれ。小学5年生のときの試験で、東地区で一位になり、スリランカ国内随一の難関校と言われる最大都市コロンボのRoyal Collegeに進学。その時に野球と出会う。
 その後、大学進学率約6%という狭き門のなかでも、スリランカ工学系トップと評されるモラトゥワ大学に進学。大学卒業後は、民間企業での3年間の勤務を経て、2015年に文部科学省の国費外国人留学制度(在スリランカ日本国大使館推薦)に応募し、合格。2017年4月から医学獣医学総合研究科修士課程に入学し、帖佐悦男教授(現病院長)の下で学んだ。その後、農学工学総合研究科博士後期課程に進み、山子剛准教授のもとで、スポーツバイオメカニクスを研究している。
 2010年に神奈川県で開催された第5回世界大学野球選手権では同国代表としてプレーし、同国A代表の選手として国際大会への出場経験もある。宮崎大学進学後は、軟式野球連盟に所属するチーム(宮崎大学アイスブレーカーズ)の一員としてプレーしているほか、週末には登山やランニングなどで宮崎の自然を満喫している。
 好きな日本食はお好み焼き、チキン南蛮。お好み焼きは自分で作ることもある。平日は自炊をして、朝は手作りの野菜スムージーを飲むなど身体にも十分気を遣った日常生活を送る。
 本名はPUNCHIHEWA GARDIYE PUNCHIHEWAGE NIROSHAN SUSITH GARDIYE。スリランカ人の名前は長いことも特徴で、首都スリジャヤワルダナプラコッテも世界の首都名としては長くて有名。

Q.日本への留学を考えたきっかけを教えてください。

 スリランカ国内を走る自動車やマイクロバスのほとんどは日本車で、車に日本語で書かれた文字は「クール」なのであえて消さずにそのまま残している車がほとんどです。 また、スリランカ人は、ドラマ「おしん」のことなら日本人よりも詳しいくらいの親日国です。第2次世界大戦で敗戦したにもかかわらず、その後急速な経済発展を遂げた日本はスリランカ人にとって憧れの国の一つでもあります。
 また、野球スリランカ代表チームの監督は、国際協力機構(JICA)から派遣された日本人コーチが務めていたこともあり、高校・大学時代に野球指導を受ける機会もありました。
 2010年に神奈川県で開催された世界大学野球選手権に出場した時は、スリランカ代表チーム監督が日本人の渡辺泰眞(わたなべ やすま)さんで、野球だけではなく、野球に臨む心構えなどを教わるうちに日本にも興味が湧いてきました。
 大学卒業後、スリランカの民間企業で研究開発エンジニアとして勤務していましたが、国外に出てもう少し研究をしてみたいと思うようになり、文部科学省の国費外国人留学制度に応募したところ、一次審査に合格することができました。
 一次審査合格後は、自分で留学したい大学(指導教員)を見つける必要がありますが、その際に、私がスリランカの高校に在籍していたときに指導を受けた後田 剛史郎さん(現宮崎大学職員)に連絡をしました。そして、後田さんがすぐに調整をして、帖佐悦男先生(当時の医学部整形外科分野教授、現同大学附属病院長)が指導教員になってくれることになり、宮崎大学に学生(研究者)として来ることができました。

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写真:山子研究室のプロジェクトを紹介する様子

Q.日本に来て一番驚いたことは何ですか?

 2010年の世界大学野球選手権の時が初めての来日でしたが、その時は、電車が1分の狂いもなく時間通りにくることにとても驚きました。スリランカでは遅れることがあたり前で、時間通りに来ると逆にびっくりするくらいです。
 また、幼い頃にテレビで見た「おしん」のイメージとは大きく変わっていました。スリランカではサリーという民族衣装を着ている女性が多いのですが、着物を着ている日本女性を見掛けることはなく、西欧スタイルの服装を楽しんでいることがとても新鮮でした。
 その他には、沢山のシニア世代の人が健康のためにジョギングや散歩をしていることも新鮮で、日本人とスリランカ人の健康に対する意識の違いもわかりました。スリランカでは、スポーツをする若い人だけが運動している感じで、40歳くらいになると動けない人がほとんどです。ましてや、シニア世代の女性がジョギングしている姿を見ることなんてほとんどありません。日本のように歩道が整備されておらず、道路で運動すると危険すぎるということも背景にはあるは思いますが。

Q.2010年の世界大学野球選手権では世界の強豪と対戦したそうですが、いかがでしたか? 

 当時の日本代表には、高校時代に「ハンカチ王子」として有名になった早稲田大学の斎藤佑樹投手(2011-2021 日本ハム)がいました。日本代表は斎藤投手をはじめ、後にプロ野球に進む選手がほとんどでした。
 また、アメリカ代表には2021年時点の年俸がMLB選手の中で2番目に高額となる3,600万ドル(約42億円)であるゲリット コール投手(2021年 ニューヨーク ヤンキース)、ジョージ スプリンガー選手(2021年 トロント ブルージェイズ)、キューバ代表にはデスパイネ選手(2017年-2022年 ソフトバンク)、ホセ アベレイユ選手(2020年 ホワイトソックス)と言った、後々に世界を代表するような選手もたくさんいて、全くレベルが違いました。※金額はいずれも推定。
 アメリカやキューバとも対戦しましたが、相手投手が投げるボールのスピードは軽く140キロを超えていて、ボールの音が今までに聞いたことのないような凄い音でとにかく速く、バットを振ろうとしたときには、ボールがキャッチャーミットに収まっている感じでした。守備では、一塁手として、ほぼ全試合に出場しましたが、飛んでくる打球は見たこともないような速い打球ばかりで、心の中では「こっちに打つな」と、祈っていました。    
 また、日本の野球の歴史は、スリランカと比較して非常に長く、野球が発展していることは知っていましたが、実際に来て自分の目で見ることで、メイン会場となった横浜スタジアムの凄さに驚きました。そして、スポーツを発展させるために必要な施設、技術、大会を支える人材が充実していて、競技力以外の部分を発展させることの重要性がよくわかりました。
 スリランカでは、クリケットやバレーボールなどが最も人気のあるスポーツですが、テクノロジーを使ってスポーツを発展させることができていない状況だったので、自分はテクノロジーを使って、野球に限らずスリランカのスポーツ全体に役に立つ研究をしたいと思うようになったのもその頃からです。
結果は全敗に終わりましたが、世界トップレベルの選手たちと対戦したことで、言葉に表せないくらいの多くの学びがありました。それは私に限らず、来日したスリランカ選手全員が同じことで、どうすればスリランカが今後様々な面で発展することができるか考えるきっかけになりました。
 今は、宮崎大学職員を中心とした軟式野球チーム「アイスブレーカーズ」の一員としてプレーしていますが、2010年に来日する際は、当時のアイスブレーカーズの選手の皆さんをはじめ、多くの日本人の方が支援してくれたこともあり、私たちスリランカ大学代表の来日が実現し、貴重な経験をすることができました。支援してくれた皆様方には、この場を借りてお礼申し上げます。

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写真:横浜スタジアムにて(2010年、阿部謙一郎さん撮影)

Q.研究内容を教えてください。

  山子剛准教授の指導を受けながらスポーツバイオメカニクスの研究を進めています。
 具体的には、打者の「骨盤」・「胸部」・「手の甲」にワイヤレスの慣性センサーを取り付け、スイングスピードだけではなく、骨盤より上部にある脊椎などの動作を解析していくことで、理想の打撃フォームを身につける効果的な練習方法を論理的・科学的に説明(証明)する試みをしています。
 慣性センサーを用いた動作解析は、野球をはじめとする様々なスポーツで行われるようになってきましたが、一般的に使用されている光学式モーションキャプチャーシステムは、屋外で使用することが困難でした。その課題を解決するために、無線を用いた慣性センサーを利用して、実際に投手が投げたボールを打つ時のような試合環境での打撃解析をしていることが特徴です。
 研究は道半ばで時間はかかりますが、近い将来、この研究が様々なスポーツにおいて応用されていくのではないかと考えています。

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写真:打撃の解析を行う様子(宮崎南高等学校にて)

■博士論⽂題⽬:
A study on key events detection in baseball hitting using inertial measurement units
(慣性センサーを⽤いた野球打撃のイベント検出に関する研究)


Q. スリランカとの架け橋として、現在行っていることがあれば教えてください。 

 私が宮崎大学に来る前から宮崎大学と出身校であるモラトゥワ大学の研究交流は始まりましたが、2016年に宮崎大学工学部の田村宏樹教授と学生がモラトゥワ大学を訪問した際にはお手伝いをさせてもらっていました。
 また、モラトゥワ大学時代の指導教員(アマラシンゲ先生)は日本で学位を取得したスリランカ人であることもあり、宮崎大学との交流には非常に積極的で、2018年には科学技術振興機構(JST)が実施するさくらサイエンスプラン事業において、モラトゥワ大学から学生・研究者11名を宮崎大学に招へいすることが実現しました。その際も、宮崎大学工学部をはじめ各学部の特徴を紹介したほか、各視察先での通訳なども務めました。
 母校であるモラトゥワ大学から、今後も、宮崎大学に進学するスリランカ人学生が来て欲しいとの想いから、頻繁にアマラシンゲ先生などとも連絡を取っていて、2018年には1名が工学研究科修士課程に入学したほか、2021年度内に新たに1名が博士課程の学生として来学する予定になっています。

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写真:出身大学のモラトゥワ大学から訪問した学生・研究者と青島神社にて撮影(2018年)

■野球がつないだ不思議な縁 

 幼い頃はアンパーラという地方都市で生活していましたが、スリランカで最も人気のあるスポーツはクリケットであることから、小学校の頃はクリケットをして遊ぶことが多かったです。また、季節によっては陸上大会に出ることもあり、走り幅跳びの地区大会で優勝して、スリランカの全国大会に出場することができました。
 その頃、私の田舎では、大会であっても裸足で参加していたことから、コロンボであった全国大会にもそのまま裸足で出場しました。すると、ほとんどの選手は陸上シューズを履いていて、なんだか恥ずかしい思いをしたことがあります。今となっては懐かしい思い出です。笑
野球に出会ったのは12歳頃です。小学5年生の時の試験の成績が良かったことから、最大都市コロンボにあるRoyal Collegeという小中高一貫教育の学校に転校することができました。これが私の野球人生の始まりで、休日などは仲間と一緒に野球をすることが楽しみになりました。また、時々、日本人が巡回指導にも来ていて、私が16~17歳の頃(2004年~2005年)に、現在宮崎大学の職員である後田さんと出会いました。
 私が17歳(高校2年生)だった2005年には、韓国で開催される18歳以下のアジア野球選手権に向けて、2週間くらいにわたってセレクションが行われ、私も参加しました。メインとなって選手を選考するのは、当時のヘッドコーチであった後田さんでしたが、最終的には代表選手になることができませんでした。
 とても残念でしたが、今思うと、その経験があったので野球をもっと好きになったのかもしれません。それから、17年が経ちましたが、今も野球をしていて、そして野球がつないだ縁でこの宮崎に来ることができたのは、私にとって本当にラッキーなことでした。野球に出会っていなかったら宮崎に来ることはまず無かったでしょう。

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写真:スリランカ代表対日本代表(2018年ひなたサンマリンスタジアム宮崎にて)

■U18アジア野球選手権
 2年に一度開催される18歳以下のアジアにおける野球選手権。通常は9月に開催され、日本からは、夏の全国高校野球選手権で活躍した選手を中心とした代表団が派遣される。
 2005年は、日本代表として田中将大選手(楽天イーグルス)、平田良介選手(中日ドラゴンズ)、川端慎吾(ヤクルトスワローズ)なども参加。スリランカ代表は予選で敗退して日本代表との対戦を逃したが、2008年に開催される北京オリンピックに向けて国を挙げて強化する中国代表に2対3で破れはしたものの、大接戦を演じて会場を驚かせた。
 2018年の大会は宮崎県で開催。宮崎大学から車で5分の近距離にある「ひなたサンマリンスタジアム宮崎」がメイン会場となり、同年の甲子園で活躍した金足農業の吉田輝星選手(日本ハムファイターズ)、大阪桐蔭の藤原恭大選手(ロッテマリンズ)・根尾昴選手(中日ドラゴンズ)などが参加し、全国から多数のファンが駆けつけた。

■ 私から見た宮崎の魅力

 きれいな海・山・川があり、本当に自然が豊かな場所だといつも感じています。
これまでに、ユネスコエコパークにも指定された祖母山-傾山を1泊2日で縦走したほか、大崩山・尾鈴山・双石山・高千穂峰・韓国岳・石堂山・鬼の目山など県内各地の山を巡りましたが、それぞれに個性があって、宮崎の奥深さを感じることができます。特に、大崩山の壮大な景色は別格でした。
 また、私のお気に入りのランニングコースである青島トロピカルロード(青島太平洋マラソンのコースの一部)は、多数のサーファーで賑わう綺麗な海を眺めながら走ることができます。
 スリランカ国内には、日本とスリランカの国交樹立60周年の節目の年となった2012年に、多くの日本人の方の支援を受けて初めて野球場が完成しましたが、宮崎県内には野球場が数え切れないほどあります。読売ジャイアンツ、ソフトバンクホークス、オリックス・バファローズなどが宮崎をキャンプ地としているだけあって、プロ野球の試合でも使うことができる国際基準を満たした野球場も多数あります。
 スリランカ人にとって、野球場で野球ができることはとても貴重な機会ですが、あたり前のように素晴らしい野球場で試合をさせてもらえることは本当に恵まれているなと感じます。
 研究続きの生活が続くと精神的に追い込まれることもありますが、宮崎の豊かな自然環境のなかで心をリフレッシュさせることができることは支えであり、宮崎大学の強みですね。そして、野球・ランニング・登山などの全てのアクティビティが、私の研究分野であるスポーツバイオメカニクスに繋がっていると考えています。

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写真:大崩山にて撮影(2020年)

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写真:木花キャンパスにて(2021年)

▼国立国定公園魅力発信アクティビティPR動画(宮崎県公式チャンネル)
※ニローシャンさんも出演しています
https://www.youtube.com/watch?v=IVya0Syj2N4

▼工学部テレビCM「未来を変える技術を学ぶ」
※ニローシャンさんも出演しています
https://www.youtube.com/watch?v=nO8swQEpfSk

▼宮崎大学紹介映像(英語版)
※ニローシャンさんも出演しています
https://www.youtube.com/watch?v=IJOkuCOnRVM

▼宮崎大学農学工学総合研究科
https://portraits.niad.ac.jp/faculty/academic-program/0532/0532-4Y75-02-01.html


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