宮崎大学
お知らせ・広報

豊かな森を次の世代に残したい
~身近な地域で始める活動の魅力~ 岡みのりさん

2022年3月14日掲載

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岡 みのり さん

宮崎大学大学院 地域資源創成学研究科 修士課程2年
木花・加江田みつばちの森づくり代表

20220314_oka_01 (2).jpg東京都出身。10年以上におよぶ世界各地での海外生活を経て、2015年にイタリアから宮崎に移住。
研究活動に取り組む傍ら、夫と営む養蜂業のほかに、子育てと地域(加江田・木花地区)の豊かな森を守るために奮闘中。
地域資源創成学研究科における修士論文では、「社会課題解決行動を促す機運醸成の場」をテーマとして取り上げ、今春(2022年3月)に修了予定。
宮崎大学産学・地域連携センターの非常勤職員としても、地域向けイベントや公開講座の企画・運営などを通じて、地域に開かれた大学となるように励んでいる。

Q.森づくりの活動を始めようと思った理由は。

移住後2年ほどたった頃から、周辺の山林が伐採される一方で、再造林をしようという山主が減っている実情を知り、自分たちに何かできないかと思っていました。豊かな自然が欠かせないミツバチを扱う者として、地域の環境作りに貢献したい気持ちと、四季折々の花が咲くような豊かな森を次の世代に残したいという想いがあり、その想いに賛同くださる山主さんとの出会いがきっかけです。

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写真左:岡さん、右側3人は宮崎大学生

~ 広がっていく植林活動の輪 ~

2019年から毎年2月下旬~3月上旬に加江田地区の伐採跡地で植樹イベントをしており、これまで3年間で、のべ87名の方に参加いただき、合計31種2000本の苗木を植樹することができました。

コロナ渦で、近隣の学校などへの声かけ等広報もあまりできず、活動の幅を広げていくことが難しかったこの2年ですが、いつも協力してくださる宮崎大学の教職員、学生、地域の皆様や熟練ボランティアの皆様に助けられています。

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~ 里山での植林活動 ~

これまで植林をしてきた場所は民家も近い里山ですが、傾斜のきつい所が多く、平坦整備された子ども向け植樹イベントの様子とは異なります。伐採後の山の様子は、荒々しく、素人の私は初めて山に入って見て驚きました。ぜひ多くの人に知ってもらいたい光景です。

森づくりは、植林した後の手入れが重要で、それが最も大変な作業となり、年に2回ほど下草刈りなどを行います。手入れをしても植えた苗がウサギなどの食害にあったり、日照りで枯れてしまったりと、植えた苗が全て生育することはありませんが、3年経って、3メートル以上に育っているものもあります。この活動に尽力いただいたボランティアの皆さんのおかげで、みつばちの森の表情が少し見えてきました。大変な作業をしたからこそ、大きく育った苗や花が咲いた苗の姿を見ると嬉しくなります。

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写真:活動の様子
(植林を行う急斜面。豊かな森を残すには体力も必要で、特に若い力を必要としています)

~ 地域の森づくりを考える講座 ~

植林活動以外にも、自身が代表を務める「木花・加江田みつばちの森づくり」と宮崎大学産学・地域連携センターの共催で、地域の森や環境への理解を促すセミナー「地域の森づくりを考える」を実施してきました。これまでの各回テーマは「森とミツバチと有機農業」、「森と有機農業、地域の取組み」、「ミツバチ目線で考える蜜源と森づくり」、「生物多様性と森づくり、地域でできること」です。

今年(2022年)で4年目を迎えたこの講座は、農学部 森林緑地環境科学科の光田先生をホスト講師に、各回学内外からゲスト講師を招いて開催し、これまでにのべ約140名の方に受講していただきました。少しずつ同じ想いを持つ人たちのネットワーク構築に役立てることができたのではないかと思います。

今年は、生物多様性の保全について、そして特に問題となっている山主の高齢化と後継者不足による管理問題に焦点を絞り、事前に寄せられた「思い入れのある山だが、遠方からの管理の難しさや管理の知識不足が問題となっている」という声や盗伐被害の現状などについて紹介した後、参加者と講師から各自の実例をもとに長年放置された森の手入れについて、伐採の際の注意点などについて意見交換を行いました。

今後も活動の中で、森づくりをテーマに宮崎大学と地域をつなぐ場を微力ながら継続して創っていければと思っています。

▼光田靖教授(農学部森林緑地環境科学科)から見た岡さん

最初に声をかけていただいたのは、平成30年の春だったと記憶しています。養蜂家の方からの問い合わせということで緊張したのを覚えています。それ以来、岡さんが企画する学び直しセミナー「地域の森づくりを考える」で講師を務めさせていただいたり、「加江田ミツバチの森づくり」に参加させていただいたりしております。

その中で常に感じていることは、岡さんのバイタリティーです。セミナーでも、ミツバチの森づくりでも、非常に精力的に活動されており、次から次へと新しいことに挑戦されています。そのバイタリティーに惹かれて多くの人が集まり、活動の輪が広がっています。私も含めて研究者はどうしても自身の研究を進めることだけに集中しがちですが、岡さんは研究で得られた様々な知見をいかに活かすのか、そしていかに地域社会また未来の社会へ貢献するのかを考え、実践されています。まさに地域密着型の大学である宮崎大学を象徴するような人だと思います。

養蜂家である岡さんは、生業としての観点から蜜源植物に着目され、そこから日本の森林がどのように扱われてきたのか、どのような現状にあるかに興味をもたれ、森林の現状を知って危機感を持ち、そこから地域の森づくりの実践を始められました。そこには養蜂業のためだけでなく、見捨てられていく地域の森林を何とかしたいという想いがあります。そのような人材こそが、SDGsの達成へ向けたこれからの社会に必要なのだと思います。岡さんが始められたミツバチの森づくりによって育成された森林は、養蜂のための蜜源を提供するだけでなく、土砂災害防止や水資源安定供給などの様々な恵み(生態系サービス)を地域社会へ提供します。

また、この取り組みによって地域住民の連携が強くなったり、地域住民とイベントに参加する都市住民や学生などが交流することによって新たな地域コミュニティが形成されたりと、持続可能な地域づくりにもつながります。まさにSDGsを実装する取り組みと言えます。SDGsを契機として、単なる経済成長を求める姿から持続可能な発展を目指す姿へと、世界は大きくパラダイムシフトしています。このような時代の中で、岡さんは「Think globally, Act locally」を標榜する宮崎大学にとって得難い人材であることは間違いありません。

私の専門である森林計画学も、木材生産のみを目的とした森林管理から、様々な生態系サービスを得るための森林管理へとパラダイムシフトしました。その中で、私は森林管理の観点からミツバチと森林との関係について研究を始めました。ちょうど、逆方向から歩いてきて岡さんと出会ったわけですが、この出会いに感謝しています。これからも岡さんから影響を受けながら、研究を実践段階に進めるべく、岡さんの取り組みにご協力させていただきたいと考えています。

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写真:学びなおしセミナー「地域の森づくりを考える」で講師を務める光田教授(2019年)

・研究者データベース(光田 靖 教授) 
https://srhumdb.miyazaki-u.ac.jp/html/100000922_ja.html

~ いつも見ている山を自分たちで作る魅力 ~

これまで3年間で2千本以上の植林をしてきましたが、宮崎県内の山を見渡せば、植林が必要とされる山林がまだ多くあります。地域にある林業に向かない山をどう育て、生物多様性を守っていくか。地域の民意や行動力、それをサポートする仕組みなど、ネットワークづくりが必要だと感じます。森づくりは子ども達につなぐ地域の、そして地球の環境づくりという大きな視野を持ちつつ、身近にできることを楽しみながら、活動の輪を広げていく形を模索中です。

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写真:植林活動を行っている場所で遊ぶ子どもたち

地域の森づくりは地道な活動ですが、いつも見ている山を自分たちで作る、5年後10年後、20年後が楽しみな森づくりです。熟練のボランティアの方々に助けられていますが、若い力なしでは存続できません。今まさに、若い力の不足が問題となっています。自分たちの作った森は地域の宝としてずっと残ります。活動に参加していただく仲間を随時募集しています。

今年(2022年)の加江田植樹イベントは、3月19日(土)の午前中に実施する予定ですので、協力いただける方からの連絡をお待ちしています。

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写真:少しずつ成長している苗木

▼学びなおしセミナー「1/22地域の森づくりを考える」
http://www.miyazaki-u.ac.jp/newsrelease/topics-info/post-772.html

▼木花・加江田みつばちの森づくり ページ
https://www.facebook.com/beesforest/



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