宇宙・素粒子・原子核を撮影する半導体イメージセンサ
半導体サイエンスプログラム|武田 彩希
プロフィール
学位取得大学
- 京都教育大学 修士(教育学)
- 総合研究大学院大学 博士(理学)
職歴
- 2014年4月 京都大学大学院理学研究科 特定研究員
- 2017年1月 宮崎大学工学部電子物理工学科担当 助教
- 2021年4月 宮崎大学工学部工学科応用物理工学プログラム担当 准教授
受賞歴
- 公益財団法人 コニカミノルタ科学技術振興財団 令和4年度コニカミノルタ画像科学奨励賞(2023.1)
「量子」をとらえて物理現象を解析する
物理現象を可視化し情報を得る方法のひとつに「量子イメージング」があります。「量子」とは、X線やガンマ線、中性子線、ベータ線などの粒子のことです。量子イメージングは、これらの量子をセンサで信号としてとらえ、得られたデータを解析することで、物理現象の情報を抽出します。例えば、X線やガンマ線は医療や宇宙観測に、中性子線を使った組成分析は、自動車の車軸やコンクリートなどの非破壊検査に活用されています。
X線をとらえる半導体イメージセンサ
量子イメージングのための計測システムも、量子の性質によって異なります。デジタルカメラやスマートフォンに使われているCMOSイメージセンサは、可視光用の計測システムと言えます。光をとらえて電気信号に変換し、カメラ内のハードウエアで処理してデータ化する装置です。
デジタルカメラ用のCMOSイメージセンサの厚さは5~10μm程度です。これでX線を観測しようとしても、X線は可視光より透過力が高いため、この厚さでは透過してしまいます。そこで、センサ部分を厚く作ろうとすると、電気抵抗を高くする必要があります。ところが、抵抗値が高いとセンサの回路を作ることができません。この相反する条件をクリアするために、産業界のSilicon-on-Insulator(SOI)という技術を利用し、高いX線感度と高度な信号処理を両立する「SOI-CMOSイメージセンサ」を開発しました。
宇宙から人体、物性まで応用が広がる
SOI-CMOSイメージセンサは、様々な用途へ応用を計画しています。宇宙X線観測により、新たなサイエンスが切り拓けるかもしれません。他にも、ガンマ線カメラの医療装置への応用や、ミューオンを使ったリチウム電池の検査など、多彩な研究がなされています。また、計測システムの開発を加速させ、近い将来、1枚のボード上にAIを使った処理搭載することで、可搬型で高度なデータ処理が可能な装置が実現することも期待できます。
高校生の皆さんへ
いろいろなことに興味をもって、アンテナを張ってピンときたものにぜひチャレンジしてみてください。最近よくニュースで聞く「半導体」。現在の科学技術において不可欠な存在であり、今後も様々な研究開発がなされていきます。もし、半導体というキーワードにピンときたら、ぜひ「半導体サイエンスプログラム」へ!