ニュースリリース
2025年07月28日 掲載
宮崎大学医学部機能制御学講座血管動態生化学の花田保之助教、西山功一教授を中心とした研究グループは、血管を新しくつくる血管新生*1において、血管基底膜*2による血管周囲の硬さと、血流によってもたらされる血管内圧*3との力バランス*4が、管腔構造をつくりながら血管の枝を伸長するために重要であることを発見しました。本研究は、著者らが熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)所属時に開始し、宮崎大学への研究室移転後継続して行ったものです。本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、2025年7月28日(月)18時(日本時間)にオンライン版で掲載されました。
・論文タイトルBiomechanical control of vascular morphogenesis by the surrounding stiffness
・雑誌名Nature CommunicationsDOI: 10.1038/s41467-025-61804-z
・URL https://www.nature.com/articles/s41467-025-61804-z
https://www.miyazaki-u.ac.jp/public-relations/20250728_01_press.pdf
【補足説明】*1血管新生血管形成の過程には大きく2つの種類があり、脈管形成および血管新生と呼ばれる。脈管形成は、血管のない時期に新たな血管が形成される現象であるのに対して、血管新生は、既存の血管から新しい血管が出芽して伸長し、新たな血管網を形成する現象である。
*2血管基底膜正常な血管のほとんどは、基底膜と呼ばれる薄い層状の構造で包まれている。血管基底膜は、おもに4型コラーゲン、ラミニン、ニドジェンなどのタンパク質によって構成される。
*3血管内圧血管内を満たす血液により生じる水圧や、心臓のポンプ機能により血液が血管内に送り込まれることにより生じる血管内の圧力。
*4力バランス血管は、血管内圧と血管の外側の圧力、血管壁にかかる張力がつり合うことで、管状のかたちが維持される。このつり合いを、ここでは力バランスと呼んでいる。血管内圧が上昇した場合、血管の外側が硬ければ、血管拡張が小さな程度でバランスの取れた状態になる。逆に血管の外側が軟らかいと、血管が大きく拡張してバランスの取れた状態になる。
*5微小流体デバイス微小な流路を人工的に作成し、そのなかで液体や細胞を制御する技術。本研究では、独自に設計開発した流路内に、内皮細胞、肺線維芽細胞などの細胞と、フィブリン―コラーゲンゲル、培地を入れることで、血管新生を3次元的に再現する実験系を使用した。
*6ライブイメージング解析顕微鏡を用いて細胞を生きた状態のまま連続的に撮影し、細胞の動きや組織の成長過程を追跡する実験解析方法。
*7血管内皮細胞血管の内側(内腔)を一層で覆うように裏打ちする細胞。血管を構成する代表的な細胞である。
*8マウス網膜血管新生モデルマウスの網膜は、出生直後から血管の形成が開始することが知られており、生体内での血管新生の評価モデルとして用いられる。
*9ペリサイト内皮細胞によって構成される毛細血管に覆うように存在する細胞(図2A)。その被覆の程度は、臓器によって大きく異なることが知られている。
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