宮崎大学
ニュースリリース

大分県深島での地域ネコ健康調査 ~ 持続可能な地域ネコとヒトの共生プロジェクト ~

2023年11月09日 掲載

2023年114日(土)、大分県佐伯市深島に暮らす地域猫に対して、宮崎大学農学部獣医学科および産業動物防疫リサーチセンター(CADIC)の教職員および学生が健康調査を実施しました。

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深島は宮崎県境に近い大分県蒲江港から定期船で30分の距離にある離島ですが、「猫の島」としても有名です。現在、深島には島民12人に対して、70匹の猫が地域猫として暮らしています。かつて島には200匹以上の猫がいましたが、2019年に多くの猫が感染症の蔓延で死亡してしまいました。このとき、島の方々は適切に管理することの必要性を実感し、まずは全ての猫たちにTNRTrap捕獲/Neuter不妊手術/Return元の場所に戻す)とワクチン接種を実施しました。島の猫たちは、島の方々とボランティアにより餌やりやトイレなどのお世話がされており、一匹ずつ名前もつけられ、不自由少なく暮らしています(体格の良いこばかりです)。

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今年の3月に、本学CADIC三澤尚明特別教授に島の関係者から島の猫たちの将来について相談がありました。深島で深島みその製造・販売とホテル・カフェを営み、島の活性化に向けて活動を行っている「でぃーぷまりん深島」の安部あづみ氏から、これからの深島の猫たちと島民の共生のあり方についてお考えを伺い、持続的な共生のためには猫たちを継続して獣医学的ケアにつなげる必要があるだろう、ということになりました。島には動物病院はなく、猫たちに突然何かあった場合、すぐに獣医療を受けることは容易ではありません。したがって、病気の予防や早期発見には平時から猫たちの健康状態を把握することが大事になってくるため、本学獣医学科教職員が協力して猫たちの健康調査を年1回行っていくことになりました。アニマルウェルフェア(動物福祉)では、人が管理する動物に対して保障すべき「5つの自由」が謳われており、この中の「痛み・負傷・病気からの自由」が今回の活動により補強されることになります。加えて、人と動物の共生においては、人獣共通感染症の制御も重要になります。さらに、本学獣医学科にとっても、臨床獣医学・獣医公衆衛生学の観点から学生の実践的な学びの場になるという側面もあります。

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8月は沖縄に停滞していた台風が急に進路を変えたことにより実施が叶わず延期となったものの、今回は好天に恵まれた中で実施することができました。113日に宮崎大学を出発し、蒲江港でチャーター船に乗り継ぎ、本学獣医学科動物病院研究室・獣医公衆衛生学研究室およびCADICの教職員・学生(留学生を含む)総勢16名が深島に降り立ちました。4日は朝から作業が始まり、主に屋外でトラップや洗濯ネットなどで猫を捕獲して鎮静剤を投与するグループと、臨時動物診療施設となった深島公民館の中で猫の健康診断、採血・採便およびワクチンとノミ・マダニ駆除薬の投与を行うグループに分かれて実施されました。学生もstudent doctorとして教員の指導もと採血やワクチン接種などを行い、安部氏と島猫ボランティアの方々により猫たちは1匹ずつ個体識別されてカルテも作られました。今回、島の猫48匹について健康調査等を実施することができました。現在、持ち帰ったサンプルについて各種検査を行っているところです。

今回、深島における持続可能な地域ネコとヒトの共生モデルの構築に向けて第一歩を踏み出すことができました。今後も健康調査を毎年実施する予定です。深島には猫以外にも楽しめる点があり、休憩時間には十分に満喫することができました。同様の活動が全国の猫島にも広がることを期待し、そのモデルケースとなるよう「ほどよく無理なく」続けたいと考えています。

今回の健康調査は、本学の令和5年度戦略重点経費(社会貢献戦略経費)により実施されました。

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△ 今回調査に携わったメンバー

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