植物は有機化学の宝箱
応用物質化学プログラム|菅本 和寛 准教授
プロフィール
学歴・経歴
- 1999年2月 博士(工学)学位取得 大阪大学
受賞歴
- 2004年10月 2004年日本化学会西日本大会ポスター賞
- 2007年2月 科学技術シンポジウム in 宮崎 2007優秀賞
- 2021年10月 宮崎日日新聞賞(科学賞)
- 2022年5月 宮崎大学工学部教職員表彰
- 2023年3月 宮崎大学教員教育活動表彰
メディア出演
- 2005年10月26日 宮崎日日新聞
- 2005年10月20日 MRTラジオ 暮らしのレーダー
- 2013年5月9日 NHK いっちゃが金
- 2014年9月6日 宮崎日日新聞
- 2021年10月19日 宮崎日日新聞
- 2022年3月3日 宮崎日日新聞
植物資源を利用した生物活性物質の合成
植物に豊富に含まれる物質を出発原料にした生物活性物質の変換合成
植物由来の資源は有機化学の分野ではお宝です、例えば糖類(砂糖)。砂糖の主成分はスクロースです。スクロースは天然ではありふれた化合物ですがこれを人間が全合成しようとすると大変困難です。非常に複雑な立体配置をしています。砂糖のように複雑な構造をしていている天然資源は地球上に数多く存在します。我々はこの天然資源を出発物質として今まで合成の報告例のない天然物やその類縁体の合成を行い。その生物活性を調べています。現在合成を行なっている化合物の一つはフィタン酸です。フィタン酸は以下に示す分岐鎖脂肪酸です。
図 フィタン酸
この物質、実は皆さんが知らず知らずに日頃摂取している脂肪酸で抗糖尿や抗肥満の効果が期待されています。この脂肪酸は牛肉や牛乳に含まれています。牛は草を食べて生きています。草の葉緑体にはクロロフィルと呼ばれる光合成色素が含まれています。クロロフィルは赤字で示した長鎖エステル鎖を有しています。
図 クロロフィル
牛が草を食べ、クロロフィルが分解されてフィタン酸が生成しています。このフィタン酸を天然物由来のフィトールから合成しその生物活性を調べています。
宮崎特産農作物の魅力開発
宮崎は農業が盛んで色々な農産物資源が豊富です。我々は宮崎産のブルーベリーの葉や茎に注目しています。ブルーベリーというと皆さんの実が目に良いことは良く知っていると思いますが、実や茎もお宝であることが近年わかってきました。葉や茎に多く含まれるポリフェノールを我々は研究対象としておりその構造解析、分離方法などを調べています。その他、宮崎特産のヒュウガトウキなどの植物や未利用部分の有効活用を研究しており、宮崎の農産物をより魅力的にしたいと考えています。
植物資源の魅力開発
宮崎特産農作物の魅力開発
ブルーベリーに含まれるポリフェノールは新型コロナウィスルの不活化、成人T細胞白血病増殖抑制活性など様々な生物活性が明らかになってきている。ポリフェノールの構造もかなり解析が進んでおり他の植物のポリフェノールと比べユニークな構造をしていることがわかってきている。このブルーベリーの葉を含んだ飴は既に市販されている。
ヒュガトウキの成分分離の研究ではヒュウガトウキに含まれる2種類の新物質の単離に成功しており、ヒュウガニンGとヒュウガニンHと我々が命名した。
植物資源の有効利用
植物に豊富に含まれる物質を出発原料にした生物活性物質の変換合成
フィタン酸とその類縁体の合成し、その生物活性を明らかにできれば、付加価値の高い牛乳や牛肉の開発に貢献できると考えている。
宮崎特産農作物の魅力開発
ブルーベリーに含まれるポリフェノールには新型コロナウィスルの不活化、成人T細胞白血病増殖抑制活性があることがわかり、今後サプリメントや治療薬としての開発が期待されている。
ヒュガトウキについてはその効能の科学的根拠が少ないため、今後単離物質や抽出物の生物活性を詳細に調べヒュウガトウキの有用性を明らかにしていきたい。
学生へ一言
私の専門は有機化学です。ですが高校時代は有機化学が嫌いでした。なぜこんなに暗記しないといけないのかが納得できなかったためだと思います。ですが今では有機化学が大好きです。このように変わったのは大学で有機化学の面白さを教えてもらったからです。大学の講義は暗記ではなく理解することを中心に学べると思います。大学の講義で化学反応がなぜ進行するのかを理解できれば有機化学などがとても魅力的な分野であることに気づいてもらえると信じております。ぜひ一緒に有機化学など科学の魅力を探してみませんか。