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2024.02.29
応用物質化学プログラム

マイクロカプセルの調製と応用

応用物質化学プログラム|塩盛 弘一郎 教授

プロフィール

学歴・経歴

  • 1988年3月 宮崎大学, 工学部, 工業化学科 卒業
  • 1990年3月 宮崎大学, 工学研究科, 工業化学専攻 修了
  • 1990年4月 三井鉱山株式会社入社, 九州研究所 研究員
  • 1991年2月 同上退社
  • 1991年3月 宮崎大学, 工学部 物質環境化学科助手 採用
  • 1999年3月 博士(工学)大阪大学 授与
  • 2001年10月 宮崎大学, 工学部 物質環境化学科, 助教授
  • 2002年11月-2003年9月 スウェーデン・ルンド大学 留学
  • 2012年4月 宮崎大学, 工学教育研究部 環境応用化学科担当, 准教授
  • 2007年4月 宮崎大学, 工学部 物質環境化学科准教授
  • 2017年4月 宮崎大学, 工学教育研究部 環境応用化学科担当, 教授

受賞歴

  • 2017年11月 消防庁 平成29年度消防防災科学技術賞 優秀賞
  • 2018年10月 環境資源工学会 平成30年度論文賞
  • 2018年11月 消防庁 平成30年度消防防災科学技術賞 優秀賞

メディア出演

  • 2021/4/7 16:50−18:55 MRT Check! 焼酎バイオマスエナジー宮崎日南工場の開所式との焼酎粕処理プラントの紹介

塩盛 弘一郎 教授

エタノール燃料を製造する焼酎粕処理プロセス

宮崎県の焼酎売上は、国内1位であり、重要な産業の一つである。焼酎の蒸留過程から焼酎生産量の2倍以上の量の焼酎粕と呼ばれる焼酎蒸留廃液が発生する。大手の酒造メーカーでは、焼酎粕からバイオガスと呼ばれるメタンガスを製造して燃料に利用している。しかしながら、バイオガス処理には高額な設備投資が必要であり、中小の酒造メーカーでは廃棄物として委託処理していることが多い。しかし、委託処理の処理費は年々増加しており、中小の焼酎メーカーでは経営を圧迫する問題となっている。低コストな焼酎粕処理プロセスの開発が求められている。

本研究では、焼酎粕に残存している糖化酵素と酵母を再利用して、デンプンを含む原料を焼酎粕に加えてエタノールを作り、エタノール燃料を製造する、図1に示す焼酎粕の処理プロセスを開発した。デンプンを含む原料として、焼酎製造工程で発生する芋クズや製品とならない芋を利用して発酵し、効率の良い蒸留器を開発してエタノール燃料を取り出せるようにした。最終的に残った固形分は、固液分離してペレットに変え、固形燃料や土壌改良材として利用する。焼酎製造で発生する焼酎粕を含む全てのバイオマスを徹底的に利用する処理プロセスを構築した。

テストプラント建設による実証試験

構築した処理プロセスについて、発酵過程、蒸留過程、固液分離過程とそれぞれ個別に実験室で実験し、最適な処理条件を明らかにした。発酵過程では、減圧蒸留による焼酎粕へグルコースや芋の残渣を添加して発酵出来ることを確認した。焼酎粕、水、およびデンプン原料の濃度の最適化を行い、約5〜10%のエタノールを製造できるようになった。常圧蒸留の焼酎粕の場合、酵素と酵母が失活していたが、酵素製剤と乾燥酵母を加える事でエタノール発酵できるようになった。  多段精留蒸留装置を用いる事で、濃度が70−80wt%のエタノールを1回の蒸留で得られ、90%以上のエタノール回収率であった。  エタノールを蒸留後の廃液をpH調製して凝集剤を添加する事により、固形分のフロックを作ることが出来、固液分離を良好に行えた。スクリュープレス固液分離装置を用いると含水率70%程度の固形分を得ることが出来た。  実験室での結果を基に、100Lの発酵槽を4基備えたテストプラントを建設した。テストプラントの処理フローを図2に、外観を図3に示す。  テストプラントで焼酎粕の処理試験を行い、処理条件を最適化した。その結果、焼酎粕15トンに対してくず芋12トンと水2.8トンを加えて、エタノール燃料を1.0トンと固形ペレット16トンが得られ、廃水が33トン発生することを実証した。

実証プラントの建設

パイロットプラントの結果を基に、1回15トンの焼酎粕を処理できる実証プラントを、あなぶきグループが宮崎県日南市に建設し、実証運転を行っている。酒造会社とは独立している焼酎粕処理プラントは、全国初であり、「焼酎バイオエナジー宮崎日南工場」と命名された。施設の外観を図4に示す。焼酎粕を処理してエタノール燃料とする新しい試みとして今後の成果が期待される。  2023年度は、廃蜜を原料としたエタノール燃料製造プロセスについて共同研究を行っている。農業の盛んな宮崎県にはデンプンを含んだ農産物や食品廃棄物が多くある。これらのバイオマスを有効利用してエタノール燃料製造へ繫げられると期待される。

高校生の皆さんへ

バイオマスを活用して利用することや、廃棄物を有価物に転換することは、今後私達の生活を維持するためには必須の技術です。私達の周りには無数の宝の山が眠っています。技術を確立するためには幅広い基礎を学び、柔軟に応用して集中する事が必要です。工学部は実用化のために学んだことを実践できる場です。皆さんの挑戦と活躍を待っています。


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