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2024.02.29
応用物質化学プログラム

微生物機能を利用した環境浄化・修復に関する研究

応用物質化学プログラム|宮武 宗利 助教

プロフィール

学歴・経歴

  • 学位:博士(工学) 宮崎大学(2010年)

受賞歴

  • 日本果汁協会技術賞(2021年)
  • 宮崎大学工学部より表彰(2022年)

宮武 宗利 助教

環境保全に活用できるような機能性を持った微生物を見つけ実用化する

現在世界各国で有害物質や産業廃棄物による環境汚染問題が深刻化しており、地球に優しい環境保全技術の確立が望まれています。微生物による環境保全や廃棄物処理は、物理・化学的な手法と比較して、エネルギーコストが少なく、環境調和型システムとして非常に有効です。近年、世界各地でヒ素汚染が深刻な社会問題となっており、自然現象による汚染だけではなく人間生活・産業活動に起因する汚染が増加しています。そこで、汚染源から除去・回収されたヒ素を処理するために、私は有毒な無機ヒ素を無毒化する機能性を持った新規微生物を自然界から分離し、その機能を明らかにするとともに、その応用開発を行なっています。

微生物を使った無機ヒ素の無毒化

有毒な無機ヒ素の処理方法として早急に実用化が求められているのが、無機ヒ素の無毒化処理法です。無機ヒ素はメチル化しメチル化有機ヒ素に変換することで、無毒化できます。しかし、無機ヒ素のメチル化効率の低さとコストの高さから、実用化に至っていません。私は、微生物の機能を利用して無機ヒ素をメチル化することで、それらの問題が解決できると考えました。これまでに無機ヒ素をメチル化できるヒ素メチル化細菌を土壌中より分離することに成功しました。さらに分離した細菌から無機ヒ素をメチル化する酵素を抽出し直接反応を行うことで、更なる変換効率の向上を図っています。

回収された無機ヒ素を無毒化することで問題解消

自然環境(地下水、土壌、工場廃水など)に含まれる有毒な無機ヒ素は、凝集/共沈、吸着、RO膜などの処理方法で除去されています。しかし、これらの処理方法では基本的な毒性を排除することなく、溶解した無機ヒ素を濃縮・回収するだけです。さらに、回収された無機ヒ素は固化または埋め立てによって最終的に私たちの生活環境から分離する必要があり、特別な保管施設と長期的な監視が必要になります。今後、保管場所の確保やランニングコストが問題になってきます。そこで、微生物を使った無機ヒ素の無毒化処理法が実用化できれば、回収した無機ヒ素を無毒化しそのまま自然へ還元することができるようになり、それらの問題を解消することができます。

学生へ一言

工学系に必要なスキルは、物事を常識に捕らわれずに多角的に見られるような柔軟な思考を持つことと、失敗しても継続的にやりきることだと思います。そのスキルを養うために、高校生の間に、様々なことに興味を持ち、失敗を恐れず挑戦してください。


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