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2024.02.29
応用物理工学プログラム

X線で見る激動の宇宙

応用物理工学プログラム|森 浩二 教授

プロフィール

    学歴・経歴

  • 学位:博士(理学)、2002年、大阪大学大学院 理学研究科
  • 留学・海外経験

  • 2000年の秋から米国ペンシルバニア州立大学に滞在し、米国のX線天文衛星チャンドラを用いて超新星残骸と呼ばれる天体の観測的研究をおこなう。博士号取得後も引き続き同大学で研究を進め、2004年の秋に帰国。宮崎大学に助教授として赴任。
  • 受賞歴

  • 第21回井上研究奨励賞「チャンドラX線天文衛星を用いたカニ星雲の観測的研究」
  • 第3回日本物理学会若手奨励賞「X線によるパルサー星雲の観測的研究」

森 浩二 教授

目には見えない宇宙を見る-X線天文衛星による宇宙観測-

皆さんが夜空を通して地上から見る宇宙は、星々が可視光線で輝く姿を我々の目が捉えたものです。一方で、我々は、X線天文衛星を打ち上げて、X線で宇宙を観測しています。以下の画像は、X線で輝く天体の一例です。エネルギーの高いX線で宇宙を見ると、爆発した星の姿や、中性子星(ちゅうせいしせい)と呼ばれる星がジェットを吹き出す様子など、激動の宇宙を捉えることができます。我々の目には見えない宇宙を見ることで、真の宇宙の理解に迫ります。

カシオペア座にある「カシオペア超新星残骸」のX線画像です。これはおよそ350 年前に爆発した星の後であり、花火のような形状をしています。(クレジット:NASA)

牡牛座の角のあたりにある「かにパルサー星雲」のX線画像です。中心にある回転する中性子星であるパルサーからジェットが吹き出す様子がわかります。(クレジット:NASA)

自分の手で宇宙を見る-衛星搭載用X線版デジカメの開発-

X線で輝く天体を捉えるためには、X線を捉える目が必要です。そのため、我々は、天文衛星に搭載するX線CCDカメラを開発しています。透過力の強いX線を捉えるために、可視光用デジカメの受光部を100 倍ほど厚くした上で、宇宙でも動作するように工夫したX線版デジカメです。2023年9月に、このカメラを搭載したXRISM衛星を打ち上げて、約7 億7000 万光年の距離にある銀河団Abell 2319のX線画像の取得に成功しました。今後の活躍も楽しみです。

我々が開発したX線CCDカメラを搭載したXRISM衛星は、2023年9月7日8時42分11秒(日本標準時)に、H-IIA ロケットにより種子島宇宙センターから打ち上げられました。

XRISM 衛星搭載 Xtend で捉えた銀河団 Abell2319 のX線画像(紫)。背景は可視光の画像。白四角が Xtend の視野を表し、その他の四角は過去の衛星の視野を表しています。(クレジット:X 線(JAXA)、可視光(DSS) )

宇宙を見る目で地上を見る-衛星搭載用カメラ技術の応用-

我々がXRISM衛星用に開発したX線CCDカメラの心臓部であるCCDは、半導体でできています。半導体は次世代のスマート社会を支える基盤技術であり、このように宇宙の世界を捉える科学技術でもあるのです。現在、我々は最先端の半導体技術を用いてX線CMOSの開発に取り組んでいます。このX線CMOSは宇宙観測だけではなく、ガンマ線や中性子を捉えるカメラとして医療・工学への応用も期待できます。宇宙を見る目で地上を見ることで、社会貢献もおこなっていきます。

X線分光撮像衛星 XRISM に搭載したフライト用X線CCD素子の写真です。皆さんのスマートフォンのカメラと同じ半導体でできていますが、一辺が3cmもある巨大素子を4つ田の字に並べています。これにより満月をすっぽり覆うほどの広視野を実現しています。

現在、開発中のX線CMOS素子の写真。X線CMOSも、X線CCDと同じ半導体です。一方で、高速、且つ、低消費電力での動作が可能です。世界のライバル達と開発競争を繰り広げています。

高校生の皆さんへ

半導体は、5G・AI・ビッグデータ・自動運転・ロボティクスといったデジタル技術で実現する次世代スマート社会の基盤技術であり、ここで紹介したように未知の量子や宇宙の世界を捉える科学技術でもあります。工学部応用物理工学プログラムでは、皆さんが、次世代スマート社会の実現と科学の発展を支える技術者や研究者として活躍できるような教育をおこないます。工学と科学がクロスオーバーする応用物理工学プログラムが、皆さんを待っています。


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